物理学賞は南極の氷で「幽霊粒子」を捕らえたハルゼン氏。近年まれな単独受賞
スウェーデン王立科学アカデミーは10月6日、2026年のノーベル物理学賞を米ウィスコンシン大学マディソン校のフランシス・ハルゼン氏に贈ると発表した。ベルギー出身。授賞理由は「IceCubeニュートリノ観測所への決定的な貢献と、天体起源の高エネルギーニュートリノの発見」。ハルゼン氏は1988年、南極点の厚く澄んだ氷が宇宙から来るニュートリノの検出器になると考えた。ニュートリノが氷の中の原子核にぶつかるとかすかな光が出る。観測所は約1立方キロメートルの氷に5,160個の光センサーを埋め、その光をとらえる。アカデミーは、彼の仕事が観測所の土台となり、遠い銀河からの高エネルギーニュートリノの初観測につながって新しい天文学への道を開いたとした。数百人が建設に関わった計画で、近年は珍しい単独受賞になった。ハルゼン氏は電話で「大きな驚きだ。まったく予期していなかった」と述べた。日本からは千葉大学のグループが建設当初から参加し、データ解析を担ってきた。賞金は1,200万スウェーデン・クローナ、授賞式は12月10日。
光や電波では見えない宇宙の現場を、ニュートリノという別の「目」で見る分野が、ノーベル賞で正式に認められた。ニュートリノは途中で曲がらず吸収もされにくいため、届いた方向をたどれば発生源がわかる。ブラックホールの周りのような激しい天体の内側を調べる道具になる。
暮らしがすぐ変わる話ではない。ただ、日本はスーパーカミオカンデで小柴昌俊氏・梶田隆章氏とニュートリノ研究で二度の物理学賞を得ており、今回の計画にも千葉大学が参加している。日本の基礎研究の延長線上にある受賞だ。
巨大な共同研究でも、最初の着想と長年の推進役がはっきりしていれば個人に贈るのは筋が通る。1988年の着想から30年以上かけた成果だ。
数百人の研究者と多くの国の予算で建てた観測所だ。単独受賞は、共同研究の時代にノーベル賞の「最大3人」という枠が合わなくなっていることも映している。
覚えておく数字は「1988年」。南極の氷を望遠鏡にするという着想から、約40年で賞に届いた。見るべきは、12月の授賞講演でハルゼン氏が次の計画として何を挙げるか。本人は新しい提案書を準備中だと語ったと報じられている。
DailyDrop 日本版 第2号・2026年10月6日 朝刊