高市首相、簗農水相を続投させる。「不適切で厳しく注意」、消費減税の財源は「特例公債に頼らず」
参議院は10月8日、高市早苗首相の所信表明演説に対する代表質問を始めた。9日まで続く。簗和生農林水産相をめぐっては、2月の衆院選で首長が対立候補を支援した地元・栃木県の那須烏山市と那珂川町について「2026年度の道路予算は大幅にカットした」と話したと文春オンラインや週刊新潮が報じた。簗氏は5日に発言を撤回して陳謝し、担当省庁に予算削減を働き掛けた事実はないと釈明した。国土交通省は6日に調査結果を公表し、減額の働き掛けや圧力はなかったとする一方、2月中旬に簗氏から道路予算の問い合わせがあったと明らかにした。首相は8日の答弁で、発言は「不適切」で「厳しく注意した」と述べ、更迭を否定して続投させる考えを示した。7日には「予算の配分に政治的な支持、不支持を持ち込まないのは当然だ」と述べていた。簗氏は参院本会議で「職務遂行に全力を尽くす」と語った。国民民主党の玉木雄一郎代表は全省庁での調査を求め、日本維新の会の藤田文武共同代表も厳しく批判した。自民党内からも萩生田光一幹事長代行が説明責任を果たすよう求めている。消費税減税の財源について首相は、立憲民主党の田名部匡代幹事長の質問に「特例公債に頼らず、歳出・歳入両面の見直しにより確保する」と答えた。NHKは、社会保障の財源に影響を与えないとの考えも示したと伝えた。具体的な財源の額は示していない。内閣広報室は2027年度概算要求で約72億円(今年度約7億円)を求め、内閣府の政府広報費280.5億円と合わせて約350億円規模になる。この増額も代表質問で取り上げられたと朝日新聞が伝えたが、首相答弁の詳しい文言は本紙では2社で照合できていない。
二つの問いが重なっている。一つは、閣僚が「自分の意向で予算が動く」かのように語ったことの重さだ。国交省は働き掛けを否定したが、問い合わせはあった。首相は注意で済ませ、続投を選んだ。もう一つは、消費税減税の財源だ。「特例公債に頼らない」は市場への約束で、長期金利が3%台にある今、言葉だけでは足りない。何をいくら削るのかが示されない限り、約束は検証できない。広報費の10倍要求は、その二つと同じ国会で問われている。
食料品の消費税減税が実現すれば、毎日の買い物に直接効く。ただ、その財源が補助金の見直しなどで賄われるなら、どこかの給付や事業が減る。自分に関係する補助金や制度が「見直し」の対象に入るかどうかを、関連法案の審議で見ておくとよい。地元の道路予算が政治的な支持で左右されるかもしれない、という疑念は、どの自治体の住民にも関係する。
国交省の調査で働き掛けはなかったと確認された。発言は不適切だが、行政がゆがめられた証拠はない。注意と続投は妥当な線だ。
問い合わせがあった以上、圧力の有無は外から見えない。「とにかく続投」では、閣僚の言葉の重さが軽くなる。全省庁の調査を拒む理由も説明されていない。
きょうの一文は「特例公債に頼らず」。首相はこの言葉を所信表明から繰り返しているが、まだ一度も金額を伴っていない。見るべきは、関連法案と一緒に財源の内訳が数字で出るかどうか。簗氏の件は、9日の参院2日目と13・14日の衆院予算委員会で、国交省への問い合わせの中身がどこまで明らかになるかが次の分かれ目になる。
DailyDrop 日本版 第4号・2026年10月8日 朝刊