トランプ米大統領は10月9日、プーチン大統領との電話会談で、ロシアが米国と世界の市場に軽油を供給することで合意したと発表した。ロイターは、30万トンをすぐに供給すると伝え、CBSは今後数カ月でさらに数百万トンを出すと報じた。ロシアは7月から軽油の輸出を禁じており、時事通信は禁輸の解除が即座に始まると伝えた。朝日新聞は、米国が対ロ制裁を一時的に緩めたと報じた。トランプ氏は「率直にプーチン氏に感謝したい」と述べ、背景には軽油の高止まりと11月3日の米中間選挙があるとされる。クレムリンの側近は、電話は「とても友好的」だったと語った。ゼレンスキー大統領は「戦争への投資」と非難し、10日にはザポリージャへの攻撃で少なくとも12人が死亡した。ドイツ政府は対ロ制裁を続けるとし、EUの報道官はロシアへの依存を減らすと述べた。
燃料価格を下げたい米国の内政が、ロシアへの圧力を弱める形で外交に出た。ウクライナが製油所を攻撃してロシアの収入を削る作戦と、逆向きになる。制裁を続ける欧州と、緩める米国の足並みの乱れは、停戦交渉の行方にも響く。
日本は原油の大半を輸入に頼る。米国の価格対策は、国際的な原油や軽油の相場を通じて、時間をおいて国内の価格に及ぶ可能性がある。ただし、量は米国の需要に比べて小さいとワシントン・ポストが指摘しており、すぐに店頭の価格が動くとは限らない。
燃料が値上がりする中で、供給を増やして価格を抑える現実的な手だ。選挙前に家計の負担を軽くしたいという判断も理解できる。
戦争を続ける国の収入を増やし、制裁の効き目を弱める。ウクライナの人々への攻撃が続く中での緩和は、国際的な連携を壊すという批判がある。
きょうの数字は「30万トン」。大統領の説明は大きく響くが、米国の需要に比べれば小さい。見るべきは三つある。実際の出荷の開始、ロシア側が同じ数量を確認するかどうか、そして欧州が対ロ制裁をどこまで維持するか。選挙前の価格対策として始まった合意が、ウクライナ戦争の交渉の材料になるかどうかを、月曜以降の原油市場とあわせて見たい。
ロイター · CBS · NBC · 朝日新聞 · 時事通信 · 毎日新聞 · 読売新聞 · AP通信 · ジャパンタイムズ · NU.nl · ANSA(10/9〜10。数量はロイターとCBS、制裁の緩和は朝日新聞、批判と攻撃はロイターと毎日新聞)
トランプ氏、ロシアが軽油30万トン以上をすぐ供給と発表。対ロ制裁を一時緩和、ゼレンスキー氏は反発
値上がりした燃料を、戦争を続ける国から買う。米大統領の決断に、ウクライナと欧州は「戦争の資金になる」と反発した。
トランプ米大統領は9日、ロシアのプーチン大統領との電話会談で、ロシアが軽油を米国と世界の市場に供給することで合意したと発表した。まず30万トン以上をすぐに出し、今後数カ月でさらに数百万トンを出すという(ロイター、CBS、NBC)。ロシアは7月から軽油の輸出を禁じてきたが、時事通信は禁輸の解除が即座に始まると伝えた。朝日新聞は、米国が対ロ制裁を一時的に緩めたと報じた。トランプ氏は「率直にプーチン氏に感謝したい」と述べ(読売新聞)、背景には軽油の高止まりと、11月3日の中間選挙があるとされる(毎日新聞、ジャパンタイムズ)。米国の軽油の平均価格は1ガロン6ドルを超えて過去最高圏にあり、イランとの戦争でホルムズ海峡を通る原油が細ったことも、供給不足の一因とされる(AP通信)。プーチン氏は「世界経済に好影響」と述べたと毎日新聞が伝えた。クレムリンの側近は、電話は「とても友好的」で、どちらも先に切ろうとしなかったと語った(ロイター)。
ウクライナのゼレンスキー大統領は、この合意を「戦争への投資」と非難し、制裁の緩和は「弱腰」だと批判した(毎日新聞、時事通信、ロイター)。ゼレンスキー氏は、ウクライナ各地の攻撃で2日間に78人が亡くなったと述べた(毎日新聞)。10日にはザポリージャが攻撃され、少なくとも12人が死亡した(ロイター)。ドイツ政府は対ロ制裁を続けると表明し、EUの報道官はロシアへの依存を減らす方針を変えないと述べた(ロイター、ANSA)。値下がりの効果には慎重な見方が多い。米紙ワシントン・ポストは、量が米国の需要に比べて小さいうえ、ウクライナが製油所を攻撃してロシアに圧力をかける努力と逆向きになると指摘し、ドイツのFAZ紙も影響は限られるとみる。WTI原油は金曜に91.85ドル(+0.39%)で引けた。同じ日、米国、ウクライナ、欧州の代表団が米フロリダ州のマイアミで協議した(ロイター、時事通信)。クレムリンは、プーチン氏がウクライナとの協議の早期再開には慎重だったと説明している(ロイター)。米国内では民主、共和の両党から批判が出た(NU.nl)。これからの焦点は、実際の出荷がいつ始まるか、そしてロシア側が数量を確認するかどうかだ。